「両親が福引きで、世界一周旅行券を当てたから実家に帰れないか…。」
書類にサインや判子を押したり、目を通したりしながら蓮が言う。
休みの日で部活動以外なら私服での校内活動は許されているのだが、目の前の生徒会長殿は律儀にも制服を着ている。
そういう直樹自身も制服を着ているのだが、やはり生徒会室に入るので制服の方がいいのだろうと思い着てきたのだが、入ってすぐに蓮に言われたのが「制服で来たの?」なのだ。
だから今度から遠慮せずに私服で行こうと思った直樹なのだが、この学園の制服は生地がよく、通気性もいいので、私服より過ごしやすいかもしれないと感じていた。
夏服は半袖のワイシャツと夏用のズボン、女子はスカート、そして男女共通のベストとなっており、ベストだけ着用は自由である。
「しかし困ったな。仮設寮は、以前配布したプリントを出した人の部屋数しかないからね…。」
前々から寮の部屋に浴槽をつけてほしいという希望やその他の改装案が出ており、前の大浴場の故障を皮切りに寮を改装が決まった。
しかし部活動や家の事情で帰れない人には、学園の近くに仮設の寮で生活してもらうのだが、実家に帰る気満々だった直樹はプリントなんて出していない。
「そういえば、直樹の実家は牧場を営んでいなかった?旅行に行ったら、ほったらかしになるんじゃない?」
「それがですね…。いつの間にか牧場からガラス工事になっていまして…。」
