「悠斗、近くで見すぎだよ。」 と直樹は言ってはいるが、別に心配はしていない。
なぜなら彼は自分が興味を持った番組なら、必ずこの状態で見ているのだから、それなのに視力は2.0。
たとえ目潰しされても、雪や彩華に顔面を蹴られても、目薬と間違えて接着剤を目に入れても、彼の視力が落ちることはなかった。
今思えば、悠斗自体が「超能力」ではないかと思う。
悠斗がテレビから離れて台所からスプーンを持ってきた。
どうやらテレビで「みなさんもやってみましょう」みたいなことになっているのだろう。右手でスプーンを持って、時折左手を近づけたり離したりしている。
3分ほどやっていたが、スプーンは曲がることはなかった。
「集中力が足りないんだ!」
「そうだね。足りないと思うよ。」
こーちゃん先生と体育以外の授業で、数秒で爆睡する悠斗に集中力があるはずない。
「明日は集中力を鍛えるぜ!!」
このときどうやって鍛えるんだと、聞いておけばよかったと、後で直樹は語っている。
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みなさんは、落とし穴を掘ったことはあるだろうか?
陥穽(かんせい)ともいわれている。
今の時代、コンクリートで舗装された所が多くて、掘る場所がないかもしれない。
もしかしたら、学校や公園などで掘ったりしたことならあるだろうか?
