ねぇ、雅紀。何年一緒にいてもあなたの見つめる目、優しいキス、そっと抱く腕に照れたのは…。
出会った頃よりも、もっともっとあなたを好きになっていったから。だからいつもドキドキが止まらなかったんだよ。

朝、ぐっすり眠る雅紀の寝顔を見ながらバスルームへと向かった。

大きなジェットバスにお湯を張る。
勢いよく注がれる水音を聞きながら歯磨きをした。

アメニティとして置いてあった入浴剤を入れた浴槽が乳白色に染まっていくのを確認し、ゆっくりと体を沈める。驚くほど設備の整った浴室でFMから流れる軽快な朝のDJの声を聞いていた。

半開きになっていたドアを音もなく開いた雅紀が入ってくる。

「おはよ~ なに? お風呂? 俺も入ろ~」

「えっ? だめだよ…。」

「いいじゃん。お風呂ぐらい」

身にまとっていたバスローブをおもむろに脱いで、私の前に滑り込んできた。

「なに? まだ恥ずかしいの? さっきまで裸で一緒に寝てたのに?」

「もう!!」思いっきり雅紀の顔に水を浴びせる。

そんな私をぎゅっと捕まえると、後ろに回り込み抱きしめた。

「ねぇ、瀬名。アメリカ行きどうなったの?」

「うん、今月末から40日間行ってくる」

あまりに密着した肌のぬくもりに寂しさを感じる。

「そっか! がんばってね。電話するし、手紙も書くから寂しくないよ」

「うん…。 ありがと」

妙に胸に迫る切ない思いを伝えるように振り返り、雅紀の首に腕を回すと、目の前に向かい合ったその唇にキスをしてくれた。

「心配しないで行っておいで。ちゃんと待ってるから」