「お待たせ」
真新しいスーツを着た雅紀が駆け寄ってくる。
「おめでとう! スーツ姿もなかなかいけてるよ」
「ほんとに? 七五三にみたいとか思ってるでしょ?」
バレた? そう言ってはしゃいでいると、雅紀の家族が近づいてきた。
「今日はお招きありがとうございます」軽く頭を下げる。
「こちらこそわざわざ来てもらって。さあ、予約の時間があるから行きましょう」
雅紀のお父さんの優しい声に即され、そのまま最上階にある日本料理店へとエレベーターで向かった。
なごやかに話す家族の中で、黙ったまま1秒でも早くドアが開くのを待った。
遮るものがない最上階の個室の窓からは市街地が見渡せる。ホテル内の料亭だけあり完璧に整えられた室内。その空間が私を一層緊張させる。
「では、雅紀の入学を祝って! 乾杯」
そんな雅紀のお父さんの声で食事が始まった。
先付け、八寸へと料理が進む。
震える手を隠しながら箸を取った私に上品な口調で母親が話し始めた。
「もう長い間一緒にいるみたいだけど…」
「3年ぐらい付き合ってる」こともなげに言ってのける雅紀。
「岩堀さんは留学なさってたとか?」
「はい、アメリカへ2年間。高校時代に」
「まぁ 一人っ子なのに。ご両親はさぞかし心配されたことでしょうね」
「絶対私が行きたいっていってもパパは許してくれないでしょ」そう姉が口をはさむ。
「自由にさせてもらっていたので」
そっと隣に座る私の手を握ってくれた。
あったかい、いつもの大きな手。
大丈夫、そんな気持ちで握り返した。
「ところでご両親は何をなさっているの?」
「そんな話関係ないだろ!」母親をにらむ雅紀。
聞かれるだろうなと思っていたので、作った笑顔を崩さずに答えた。
「はい。建築関係の会社を」
「まあ、会社経営ですか?」
会社経営か…。いいように言えばね。
そんなことを思った。
よく見られたいと思う気持ちが空回りした緊張感で、せっかくの料理も全く食べた気がしなかった。
食後「ごちそうさまでした」そう頭をさげて、そうしてやっと二人になれた。
真新しいスーツを着た雅紀が駆け寄ってくる。
「おめでとう! スーツ姿もなかなかいけてるよ」
「ほんとに? 七五三にみたいとか思ってるでしょ?」
バレた? そう言ってはしゃいでいると、雅紀の家族が近づいてきた。
「今日はお招きありがとうございます」軽く頭を下げる。
「こちらこそわざわざ来てもらって。さあ、予約の時間があるから行きましょう」
雅紀のお父さんの優しい声に即され、そのまま最上階にある日本料理店へとエレベーターで向かった。
なごやかに話す家族の中で、黙ったまま1秒でも早くドアが開くのを待った。
遮るものがない最上階の個室の窓からは市街地が見渡せる。ホテル内の料亭だけあり完璧に整えられた室内。その空間が私を一層緊張させる。
「では、雅紀の入学を祝って! 乾杯」
そんな雅紀のお父さんの声で食事が始まった。
先付け、八寸へと料理が進む。
震える手を隠しながら箸を取った私に上品な口調で母親が話し始めた。
「もう長い間一緒にいるみたいだけど…」
「3年ぐらい付き合ってる」こともなげに言ってのける雅紀。
「岩堀さんは留学なさってたとか?」
「はい、アメリカへ2年間。高校時代に」
「まぁ 一人っ子なのに。ご両親はさぞかし心配されたことでしょうね」
「絶対私が行きたいっていってもパパは許してくれないでしょ」そう姉が口をはさむ。
「自由にさせてもらっていたので」
そっと隣に座る私の手を握ってくれた。
あったかい、いつもの大きな手。
大丈夫、そんな気持ちで握り返した。
「ところでご両親は何をなさっているの?」
「そんな話関係ないだろ!」母親をにらむ雅紀。
聞かれるだろうなと思っていたので、作った笑顔を崩さずに答えた。
「はい。建築関係の会社を」
「まあ、会社経営ですか?」
会社経営か…。いいように言えばね。
そんなことを思った。
よく見られたいと思う気持ちが空回りした緊張感で、せっかくの料理も全く食べた気がしなかった。
食後「ごちそうさまでした」そう頭をさげて、そうしてやっと二人になれた。