大学4年生 まだ春休み中の4月8日は雅紀の入学式。

=前日=

「もしもしさや? 今時間大丈夫?」

「うんいいよ~ 久しぶりだよね。お互いバイトバイトでなかなか会えないし」

「そうだよね~。それより相談なんだけど」

「なになに? 雅紀くんと喧嘩でもした?
 ってあんな兄弟げんかで相談はないか」

「もう! またそんなこと言うし。そうじゃなくって。明日雅紀入学式じゃない? その後、家族で食事に行くからって誘われたの」

「いいじゃん! もう3年近く付き合ってるんだし。受験を支えた彼女に感謝みたいな感じじゃないの?」

「でも家族総出だよ。おじいちゃんおばあちゃんまで。一族総出。おまけにホテルの料亭」

「おいしいご飯食べられるよ」

「また人事だと思って! 前に一度会った時も、お金持ちの奥様風なお母さんなんか嫌な感じだったし。あんなお嬢様大学に通うお姉さん…。っていっても1つ年下の小姑までいるんだよ。食べ方とか、マナーまでチェックされそうで…」

「だから瀬名付き合い始めてからお茶習いに行ってたんじゃないの?」

そうさやの言うように雅紀と付き合い始めてから、私はあのお母さんの完璧に主婦をこなす姿に感動したのと、威圧感に負けない自分を作る為にお茶といけばなの教室に通い始めていた。

「そうなんだけどさ…」

「雅紀君とこのまま付き合っていくなら一度は越えないといけない壁だよ。がんばって行っておいで。瀬名なら大丈夫だから」


そんなさやのアドバイスに素直に従って、出席することに決めた。