=春=

校舎へと続く坂道は桜の花のアーチで彩られる。
新入生を勧誘するサークルや体育会の声。
長かった春休みを終え、今年も私たちは3人でつるんでいる。

「なんか懐かしいね。もう3年目か~。去年までは新入生に間違われていっぱいビラもらったのにね。さすがに今年はないか」

「特に瀬名なんか童顔だから断るのに苦労しながら、去年もここ歩いたよね」

楽しそうな二人。
やっぱり春は人を楽しい気分にさせる。

「そんなことより、二人はゼミ決まった?」

「うん、決まったよ。っていうか申請出すだけだし。そっか、瀬名の学科は書類審査と面接があるんだよね」

英文学科のさや。就職に大きく影響すると言われるゼミ選択も休み中に希望の出版社でのバイトを始め、がんばってそのまま就職してみせると意気込み、簡単に単位をくれるというゼミへの所属を決めていた。

まさよは経営学部では就職に強い!と有名なゼミへと毎日レポートを持って通い、根負けした教授に認められ入ることが決まっていた。

「瀬名は? 入りたいゼミ決まったの?」

ほとんどの教授が臨床心理士の資格を持ち、後進の育成に力を入れていたが、『ガンを患う子供とその親のカウンセリング』をテーマに掲げる私の卒論を見てくれる先生は皆無に思えた。

「せっかくだから佐倉教授のとこにチャレンジしてみようかなって」

「まじで!! 有名な先生なんだよね? 何冊か本とかも出してる」

「うん。でもあの先生の授業とりあえず全Aだし、賭けてみようかなって」

『そっか。夢叶うように頑張るしかないね』

そんな二人の言葉を胸に書類を提出した。