初めて雅紀の部屋を訪れた時、窓の外には新緑が広がっていた。今は葉を落とした寂しげな山の景色が広がる。

出会って10か月が過ぎた。

「ほんと疲れたよ。ありえなくない? 12回だよ。12回。もう最後の方とか集中するも何も会場に行くだけでいっぱいいっぱいだったし」

雅紀は床に座った私の膝枕に頭をのせながらそう愚痴る。

「お疲れ様。がんばったね」

雅紀の髪をなでながら、時々こうして甘える雅紀を可愛いと思う。

「手ごたえはどう? 受かってそうな感じ?」

「多分すべり止めは余裕だと思う。もう完璧ってぐらい出来たから。まあ、問題もバカにしてんのかってぐらい簡単だったし。でも本命は正直やばいかも」

「そっかあ、でもわかんないよね。みんな同じようにできなかったかもしれないし」

「俺、今の瀬名の言葉に元気出てきた」

そう言いながら起き上がって私を押し倒し、いたずらっ子のような顔で頬におでこにキスをする。

その唇が首筋に触れた瞬間、体に違う感覚が走る。

「感じるの?」私の微妙な変化に面白がって続ける雅紀。

「だめだよ! お家の人いるんだし」

「今いないよ、買い物に出かけてる」

「でも」そう言いかけた私の唇をふさぐようにキスをして黙らせた。

大切に、壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめ、何度も軽く唇を重ねる。

どうしていいのかわからなくなり、雅紀の胸に顔をうずめた。そんな私の手に指をからませ、うつむかないようににぎった両手を頭の上に固定する。愛おしそうな雅紀の目に体が熱くなるのを感じる。

「大好きだよ 瀬名は?」

そういう雅紀にうなずいてみせる。

「おれの目を見て、ちゃんと言って」

「大好きだよ」

私たちは気持ちを確認しあうかのように、ゆっくりと時間をかけて一つになった。