いつの間にか街を歩く人がコートを羽織り、ブーツを履く季節。

街には一足早いX'masイルミネーションが輝く。

騒ぐ生徒達、バイト先の予備校。

雅紀と付き合うことになり、どうにも気まずかった私は別のクラスの担当に変えてもらっていた。
でもこの日は雅紀のいる大検クラス。

「静かにして~ この説明だけ大切だから聞いて!」

叫ぶように生徒に声をかける。

一番後ろの席でそんな私を面白そうに見ている。

早く終わらせてよ、そんなジェスチャーを送ってくる。

「来週の模試の手続き!!! みんな終わってる? 志望校コードをマークシートに書いて。お願いだから聞いて!」

「提出した人から帰っていいから~」

帰っていいそう言ったとたん、急いで書き始めた。
そして私が立つ教卓の前に適当に置いて出て行く。

「さようなら、チューターさん」最後の生徒だ。

誰もいなくなった教室でみんなが提出したマークシートをまとめていると雅紀が戻ってきた。

「お疲れ様 大変そうだったね」

こうしてチューターと生徒として会うのは久しぶりだ。

「提出終わったら帰っていいんだよ、どうしたの?何か質問?」

わざと冷たく、仕事モードを崩さないで返事をする。

そんな私に近づいてくると小声で「待ってるから、終わったらメールして」

そういって頬に軽くキスをし、出口へと駆け出した。

「じゃあね、岩堀チューター」生徒の顔に戻り教室を後にする雅紀を見送った。