無言でステーキを食べる雅紀。
私は真っ白になり動きを止めた頭に浮かんだことを話し始めた。

「今日の朝まさよから電話があってさ、ちょっとした用があるから先に大学行って履修登録済ますって。関係あるのかな、浩一と一緒にいることと。なんか変な感じはしてたんだ。妙に早口で、慌てる感じで」

「子供が親に嘘ついたり隠し事するみたいな?」

「そう! 私も同じことさやに言った。なにかを隠してる感じがしたの。でも、もし浩一のことが好きで会う約束してるなら話してくれればいいのに」

「でもさ、冷静に考えてみて。瀬名とあんな別れ方して周りのみんながいい感情を持っていない相手のことを、瀬名は好きだって言える?」

雅紀の発言に、はっとした。

「言えない… そうだよね。まあちゃんの言う通りだ」

「それにただご飯食べてるだけかもしれないしさ。そのうち話してくれるかもしれないよ」

「ありがと、そうだよね。せっかくのデートを台無しにしちゃいそうだったよ。ごめん、楽しもう! 1週間ぶりのデートを」

「そう、その調子」

気にならないと言えば嘘になる。
でも雅紀とのデートを楽しもうと思った。

どこか頭の隅で考えながらも、振り切るように夕食を楽しもうと思った。