「瀬名 また飲んでたの? テンション高すぎ」

「今日ねぇ 明日さやの誕生日だから前祝っていうの? ほら当日は彼と祝うだろうからさ。だから二人でビアガーデンでもりあがってたの」

いつもはあまり言葉数の多くない私が機関銃のように話すのを聞いて笑っている雅紀

「楽しかったみたいだね」

「うん! それでね。来週まあちゃんお誕生日だよね! お祝いしよぉ。今日みたいに。おもいっきり楽しく。だって大好きなまーちゃんが生まれた日だから」

いつもは恥ずかしくって、何度雅紀に聞かれてもうなずく以外 ”好き”だって言葉で伝えることをしなかったのに。

恐るべし!! 酔っ払い!

「ありがとう。楽しみにしてる」

「うん、楽しみにしてて。土曜日、誕生日前日に会おうね」

「わかったよ。ってか大丈夫か?ちゃんと帰れてる?」

「余裕余裕! 瀬名の家近いから。もう電車乗ってるし5分で駅だよ」

「もう遅いから駅からは歩かないでタクシー乗れよ」

昔、駅から家へ向かう途中ひったくりにあった話をして以来いつもこうやって心配してくれる。

「は~い まあちゃんまだ起きてる?」

「瀬名がちゃんと家に着くまで起きてるよ」

「わかった。じゃあ着いたらまた電話するね」

会社帰り?接待帰り?の疲れたおじさんの顔が並ぶ終電の車内。私は幸せで胸が一杯だった。

1コールで出た雅紀。

「ただいまー」

「遅いよ! 心配してたんだよ」

「ごめんなさい。タクシー乗り場行列で」


なんだか少し怒っている雅紀。でもうれしい!心配してくれてたのがわかるから。

「あのね…。 土曜日なんだけど、何食べたい?」

「なんでもいいよ。瀬名が祝ってくれるだけでうれしいから」

「じゃあゆっくり考えとくね」

「うん。楽しみにしてる」

そんな会話の後、今日のさやの誕生日祝いを詳しく話した。

「じゃあもう遅いし。瀬名疲れたでしょ? お風呂入って寝て」

「うん、そうする」

「じゃあね、おやすみ」

「おやすみなさい」

「愛してるよ」

いつの頃からか、電話の最後に言ってくれるようになった。

「ありがとう」私が返事して電話を切る。

今でも思い出す幸せな習慣だった。