入道雲は姿を消し、夏の終わりを告げるやわらかく心地のいい風。日差しもじりじりと肌を焦がすような強烈なものから少し柔らかな、おだやかな感じに変化してきている。

いつのまにか夏が過ぎ、秋を迎えようとしていた。

「だいぶ涼しくなってきたね」

「なんかいつのまにか夏が終わっててさみしいな。
今年の夏はなんだか強烈だったよ」

私はオープンカフェでさやとくつろいでいる。

時間があえばよく二人でこうしてお茶をしながら、恋の話に花を咲かせた。

「夏休みももうすぐ終わりだね~。どこにも行けなかったし、どっか近場でもいいからプチ旅行行きたいな。さやは彼と旅行行ってきたんだよね」

「うん 日本海側? にある温泉? プールとかまでが温泉のリゾート施設みたいなのに」

「楽しかった???」

「それなりにね」

タバコの煙をくゆらせながら、意味ありげな表情でさやが答える。

「なによ、そのそれなりにねってのは」

「ふふふ。私のことよりさ、どうよ 瀬名は」

「??? 雅紀とのこと?」

さやがからかうように続ける。

「ラブラブなんでしょ!」

私は自分の恋ばなが苦手で、すぐに顔が真っ赤になってしまう。そんな私を知ってるからからかっているのだ。

「まぁね」

さやの顔を見ないで、タバコに火をつけながら答えた。

「2人ってさ、まだやってないでしょ?」

あまりの直球に吸い込んだタバコの煙にむせた。

その拍子に涙目になる。

さやは爆笑してる。

「普段は結構クールで冷静なのに。変なとこ乙女だよね、瀬名は」

友達の恋愛相談に乗ったりする時よくそう言われる。

でも、一歩踏み込んだそういう話はどうも恥ずかしくてたまらないのだ。

「だって、雅紀大検で忙しかったし…。あんな騒動もあったしさ」

なんとかごまかそうとする私。
あきれたような顔で私をみるさや。

「そういう時がチャンスなんだよ。ほら、なんか逆に盛り上がるっていうの? 改めての気持ちの確認になったんだからさ」

「確かにね…。でも…。雅紀誘ってこないし」

「瀬名の方が3つも年上だから誘いづらかったりするんじゃない? 瀬名から誘ってみたら?」

「無理……」