早めに家を出て改札で雅紀を待った。
いつもそうしてくれたように。

笑顔で迎えよう! そう思った。

「瀬名~」

私が気付くより先に、雅紀が私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

帰宅を急ぐ人たちでごった返す駅の改札でぴょんぴょん飛び跳ねながら手を振る雅紀。

そんな姿を見たら、うまく笑えなかった私も自然に笑顔になった。

「瀬名」


そういいながらのおもいっきりのハグ。


「ひさしぶり! 元気そうだね」


混雑する改札で周りを気にすることも忘れてそう言った。

私の前に起立の姿勢で立った雅紀は、急にまじめな顔をして乱れたジャケットの裾を直しこう言った。


「瀬名 無事大検合格!!!!」

くしゃくしゃのB4の紙を私の目の前に広げた。

「合格したよ。ね!やっぱ俺天才?」

「やった!!!! がんばったね~。やっぱ天才?」

「当ったり前じゃん! だから言ったでしょ。余裕だって」

雅紀の笑顔を見ながら私は久しぶりに笑った。

「お姉さん、お茶でもしませんか?」

茶目っ気たっぷりの雅紀に手を引かれ、二人にとってのいつものお店でお茶をすることにした。