終電がやばいことに気付いた私達は大急ぎでお会計を済まし、上機嫌で店を出た。

金曜の繁華街 多くの人が行き交う中、私の目は一点に釘付けになった。

浩一が店の前にいる。

その瞬間、私は声も出なかった。

さやも雅紀もまだ気付いていない。

その時だった。

「瀬名!」

浩一が笑顔で近づいてきた。

普通の笑顔だったと思う。

でもその目の奥にいいしれない恐怖を感じる。

「久しぶり、帰ってたんだ。飲んだ帰り?」

「まさよちゃんにここだって聞いて」

さやと雅紀は黙ったまま見守っている。

低く、悲しみを押し殺すような声で話し始めた。

「なあ、もう一回俺にチャンスをくれないか? 新しい彼氏ってあの子? まだ予備校生なんだろ。そんなやつより絶対俺の方がお前を幸せにしてやれるから!」

強引に私を連れて行こうとするのを見た雅紀が
たまらず飛び出してきた。

「おじさん、瀬名嫌がってるのわからない? いい年してしつこいんだよ。何の為に瀬名がわざわざ山口まで行ったかわかんないのかよ?」

浩一の挑発に乗ってしまった。

なんとかしないと。

頭ではわかっているのにまったく動けない。

「ねぇ ちょっとさ、こんなとこで熱くなってないでどっかお店入って冷静に話しませんか? 雅紀くんはお酒も飲んでることだし」

さやが仲裁にはいってくれた。

でも……。