どれだけ喧嘩をしても欠かすことなく繰り返される夜10時の電話。

雅紀の声を聞くことは1日を終えるために欠かせない大切なものだった。


「まあちゃん! 就職決まったよ」


「マジで? おめでとう!」


雅紀からおめでとうと言われてやっと実感が湧く。


「面接で暴言吐いたのになぜか採用」


「よかったね」


本当にうれしそうな声に人事のようだったこの事実をリアルに感じることが出来た。


「どんな会社なの?」


「わかんない……」


正直建築に携わる設備会社だということ以外何も知らなかった。


「自分が受けた会社でしょ?」


あきれたように笑う雅紀に言った。


「何でもいいの! 雇ってくれるんだから」


やっと本格的な社会復帰を目の前に気持ちは華やいだ。

私自身は全く蚊帳の外な感じだったけど、みんなが喜んでくれている! そのことがうれしかった。

働いてお金を貯めて結婚式をするんだって。

あの日流した涙の分だけみんなに笑顔で祝福される未来を描いた。