ホテルの部屋に入ったとたんに抱きすくめられた。

「まあちゃん……」


ベットに押し倒されるような体勢になった。

唇から徐々に首筋へと移る感覚に体が強張る。

雅紀のことは変わらず大好きなのにもう一つの気持ちが拒否するように震えが止まらない。

怖くない、平気だよ自分に言い聞かせるのにギュッとつぶった目から涙が流れ落ちる。

そんな雫が雅紀の頬に触れ動きが止まった。

悲しげに見降ろす視線を見てはいられなかった。


「やっぱり俺のこと許せない?」


そんな切ない響きに息ができなくなる。

頭からシーツを被り泣き顔を隠した。


「ごめんなさい」


謝ることしか出来なかった。


「なんで謝るんだよ!」


こんな風に私に対して声を荒げたのは初めてだった。


「我慢すんなよ! 俺には本当の気持ち話せよ」


「だって……、好きなのに。前みたいにギュッとしてほしいのに…」


心と体がバラバラだったんだ……。


「もう我慢しないで、瀬名が本当に俺を受け入れられるようになるまでいつまでも待つから」


無理に笑おうとしていた私への愛情だったことに気づいた。


二人で穏やかに歩み続けられると思った道。

未来は必ず二人で迎えると疑わないぐらいに寄り添っていた二人の心。

一緒にいないこの先の人生なんて想像できなかった。

なのに再び歩き始めた道には小さな溝があって…。

気付かない間にどんどん広がっていった。

でも雅紀のことが大好きだから傍にいたかった。




ねぇ、雅紀。


優しい笑顔、あったかく大きな手。

あなたの存在が恋しくて仕方がありません。

運命のせいにはしたくない。

こんな私の傍にいてくれますか?