10年越しの恋

食後、いつものアイスティではなくオレンジジュースを飲みながら話をした。

「なんかあんな写真でも見たらお母さんの気持ちになったって言うか…」


「そうだよね。俺もやっと実感が湧いたよ。でも瀬名大学院はどうする?」


「そんなの頭の中から消えちゃったんだ。この子を守らないとって、自分でも不思議なんだけど」


「わかった、じゃあ今から瀬名の家に挨拶行こ」


そんな雅紀の言葉とは正反対のことを考えていた。


「まずはまあちゃんのお家の了解を取ろう。家は絶対にOKだから」


私の言葉の意味が分からない様子の雅紀。


「まあちゃんの学校のこともあるしね、だからその方がいいと思うんだ」


「わかった、じゃあ今日帰って話してみるから」


「うん、大変だと思うけど……」


「任せとけって!」



車に乗り込んだ後、少し調子が悪い私の為に駐車場で椅子を倒しやすんでいた。


「お腹触ってもいい?」


「まだ何にもないよ」


そんな私の言葉にも暖かい大きな手が乗せられる。


「華ちゃん! パパですよ。がんばって話してくるからね」


「華ちゃんって?」


「この子がお腹にいる間の名前、なんか良くない?」


「うーん、でも男の子だったら?」


「絶対女の子な気がするから」


そんな雅紀の純粋な優しさにうれしくなった。


「まあちゃん、がんばってこの子守ろうね」


二人で指切りを交わした。