10年越しの恋

「おめでとうございますでいいのかな? 妊娠5週目、予定日は3月18日です」


予定日はゆうの誕生日と同じ日だった。


「この時期は不安定ですから来週もう一度きてください。そのころには赤ちゃんの心臓の音確認できますよ」


うれしそうに話してくれる先生につられて私まで笑顔で診察室を後にした。


「妊娠5週目だって」


そういって一人居心地悪そうに待ってくれていた雅紀に超音波写真を見せた。


「これ……」


「雅紀と私の赤ちゃん」



思ったよりも時間がかかってもうお昼。

私たちはファミレスへと向かった。


いろんな食べ物の匂いが混ざる店内は一歩入った瞬間から吐き気との戦いだったけど、でも禁煙席でとヘビースモーカーの雅紀の言葉に少しうれしくなった。


「何食べる?」


「うーん、何か日によって食べられるものが違って目の前にしてみないと分かんないの」


「俺は日替わりランチにするけど、どうする?」


「じゃあエビグラタン」


料理を待つ間、無意識でお腹をさする。

そんな私を見て微笑む雅紀。


「写真見たら急に生みたくなった?」


図星だった。


「だって、ほら右手」

雅紀の言葉に初めてお腹を撫でていた自分に気づく。

照れ笑いでごまかすしかなかった。

運ばれてきた料理に手をつけると、なぜか大好きだったエビに吐き気…。

雅紀のお皿にエビを移動させると一人笑う。

「今まで食べすぎだからもう赤ちゃんいらないって」

そんな言葉に緊張がほぐれた。