10年越しの恋

「岩堀さん、岩堀 瀬名さん」

名前を呼ばれて入った診察室はなぜかカーテンで仕切られている。


「スカートはそのままでいいですから下着だけを取って診察台に上ってください」


訳がわからないままに診察台に上がるとちょうどおへそあたりにかわいらしいカーテンがあり直接先生の顔が見えないようになっていた。


「はい、じゃあ岩堀さんここに足を乗せてください。徐々に開いていきますからね」


看護師さんの声に緊張で体が硬くなる。


「市販の検査薬で陽性か、じゃあほぼ間違いないね。少し冷たいですけど我慢してくださいね」


体内に何かが差し込まれる。微妙な痛みに目を閉じた。


「次はお腹の様子を見ますよ。目の前にある画面を見て」


びくびくしながら目を開けると真っ黒な中にピカピカと光る小さなものが見えた。


「妊娠してますね。あれが受精卵です」


小さな小さな白い塊のまわりにもう一重光る何かが見えた。


その瞬間今までとは違う気持ちが芽生えたんだ。

多分世間一般にいう母性。

たまらない幸せに満たされた。