「瀬名、全然食べてないじゃないの」


「なんか風邪薬で胃が荒れちゃったみたい、何でもないから」

なんとか我慢し、乗りきった夕食の時間。

部屋に戻り一人になると急に不安が襲ってきた。

ベットに突っ伏すと大きくなった胸に痛みを感じる。

下腹部も張っているだけだと自分に言い聞かせていたが、何か違う重みを感じていたのも事実だった。


横向きに小さく丸くなりながら考える。

雅紀はまだ20歳で学生。

私も9月に試験が控えている。

どうすればいいんだろう…。

考えていると途端に襲ってくる吐き気はまるでお腹にいるだろう赤ちゃんが自分の存在を主張しているみたいだった。



翌日はちょうど母が友達と買い物に行くというので不在。


薬局の開店時間と同時に店内へと駆け込んだ。

いろんな種類のある検査薬の前で立ち尽くす。

なぜか手に取るのに恥ずかしさを感じたが、よく考えてみればもう23歳。

何の問題もない年齢だと自分に言い聞かせ、3個パックになったものを買った。


家に帰るとしっぽを振るモモにも目もくれずにトイレへと駆け込む。

急いでパッケージを開き説明書を読むと、

”妊娠反応陽性の場合は2つの窓に++と表示 ”

震える手で試す。

”判定までに60秒 ”とあったが

日にちが経過していたからなのかな、恐る恐る目を開くとあっという間に++が現れた。

”99%の正確性 ”

でも、まさかがある。そう思い買った3本とも試したが全部結果は同じだった。


『どうしよう……』


あまりの不安に涙が出てくる。

そして不安を感じると吐き気が襲う。


とりあえず雅紀には話さなきゃ…。

そう思って震えが止まらない手でメールを送った。

”今日大学の帰りに会えませんか? ”

”試験今日で終わりだから、3時には行きます”