翌朝早起きした私たちは自転車で島を一周した。

想像以上に起伏の多い島内は登りきったと思うとすぐに下ってまた上るの繰り返し…。

「女性にはきついですよ」そういってバスでの観光を勧められた理由がわかった。

でも登りきった先にある廃墟となったリゾート施設のビーチは最高だった。


「入ってもいいのかな?」


「とりあえず行ってみよ」


台風などの強い風による風化から欠けた案内板に従い急な坂を下ると、かつては駐車場だったと思われる空地とその奥に本当に寂れた建物が点在する。

自転車をその辺に停めて歩いてみることにした。

ビーチへの道すがらに見た戸建の別荘らしき建物内部は夜になると本当に何かが出るのではないかと思うほど荒れていた。


「なんか昼間でも廃墟って薄気味悪いね」


私の先を歩く雅紀に声を掛けると突然開けた景色に言葉を失っていた。


「どうしたの?」


その背中越しにみた海はここまでの道のりの陰鬱さとは正反対の輝きを放つ。

「すごい!」


透き通った水にサンゴが砕けて出来た白い砂。

その向こうにはマングローブの森が広がっている。


昨日訪れた竹富島のビーチの比ではない。

少し生暖かい水と照りつける日差しに心がまっさらになる気がした。


雅紀と二人波打ち際で時折打ち寄せる波に日に焼けた肌を冷やしながら長い間海を眺めた。


いつまでもこんな風に二人で過ごせると思った。





あんな悲しい決断を迫られるなんて。


この時の私達には全く知らされていない運命だった。