4月、世の中では新年度が始まる。

入学、入社。新たな生活に胸を踊らす季節。

大学を卒業し就職という道を選ばなかった私は、ぽっかりとエアポケットに落ちたような感覚だった。

9月に大学院の試験があるとはいえ何にも束縛されない生活。

どこにも属さないということがこんなにも不安なものだとは知らなかった。

バイトは変わらず予備校。

毎日図書館へ通い、試験に課されるという英語文献の全文和訳と論述の課題をこなして、週に一度大学で教授に添削を受けた。



4月中旬、配属先が私の家の近くに決定したまさよが近所に引っ越して来る日。


「手伝いに来たよー」


8畳ほどの部屋は段ボールで埋め尽くされていた。

「ありがとう! 箱の中身はほとんど洋服だから。でもTVなんかの配線が苦手で…」

「そんなことだろうと思った」

雅紀が顔を出す。

「来てくれたの? じゃあお願いしちゃっていい?」

「遠慮なくどうぞ」

意外なほどてきぱきとこれはここでいいの? とまさよに指示を仰ぎながら動くのには驚いた。

私もまさよと二人でカーテンを吊るしたりと細々した作業を続けた。



片付けも一段落した頃、これまた近くに住むゆうが訪ねてきた。

「遅くなってごめんね。はい、これ差し入れ」

コンビニの袋にはたくさんのペットボトルとお菓子やサンドイッチが入っていた。

「みんなありがとう、少し休憩しよ!」

やっとスペースの空いたフローリングの床に円を描くように座った。