鍋のあとのうどんまで完食した西田君と雅紀は『じゃあ男同志の時間を楽しんでくる』と言ってダーツバーへと向かった。

残った4人で洗い物を済まし、改めてグラスを合わす。

「では、ガールズナイトの始まり。乾杯」

あまりお酒に強くないゆうも今日はお泊りっていうことで楽しそうに飲み続けていた。

「そう言えばさや、あの年上の彼とはどうなの?」

手酌でワインを注ぎながら何気なく尋ねる。

「それがさあ、聞いてくれる?」

全員がさやに注目した。

「なんかね、先月ぐらいから全然携帯に連絡してもでなくっておかしいなーって。でも仕事忙しいぐらいにしか思ってなかったの」

『うん』

「そしたら先週彼のお母さんから電話があって…。失踪したって」

『失踪?』3人の声が揃った。

「驚くよね? 私もなんのことか全くわかんなくて、そしたら昨日手紙が届いたの」

「なんて書いてあったの?」

「さやの生き方を見てたら自分が分からなくなったって。おまえといると自分の人生がなんか嫌になった。だから別れようって」

「??? なにそれ! 意味わかんなくない?」

理不尽に思える内容にゆうとまさよが声を荒げる。

「でもね、そう言われると思い当たるんだ。彼にずっとそんな人生でいいの! もっとがんばらないとって言い続けてたから…」

話し終えると、急に泣き出したさやを抱きしめた。

「さやの責任じゃないよ。大丈夫だから」


ひとしきり議論した後、いつの間にか3人とも眠っていた。

一人眠れずにいた私は大きな体を胎児のように丸めるさやの髪を撫でながら、

「辛かったね、でもがんばって。さやなら大丈夫!」そう小さな声でつぶやいた。


その後中古車センターに車が売られていたこと以外彼の消息を聞くことはなかった。

今では「昔付き合ってた彼が失踪しちゃって」と明るく話すさや。

恋にはたくさんの形があり、人の人生に影響を与えるんだなと改めて感じた。