愛を餌に罪は育つ

私もシャワーを浴び、その足で寝室へ向かった。


腰にクッションをあて、ベッドに腰掛けベッド脇のスタンドライトの灯りで文庫本を読んでいる秋。


真剣な顔してる。


私が寝室に入ってきたことにも気が付いていない。


どんな小説を読んでるだろう。


私は直ぐに感情移入してしまって、表情を変えずに小説を読める人って凄いと思う。



『ちゃんと髪の毛は乾かしたのか』



小説を真剣に読んでいるかと思いきや、チラッと目線を向けられドキッとした。



「乾かしたよ。だからギュってして」



秋は笑いながら本を畳みサイドテーブルに置くと、膝を軽く叩き微笑んだ。



『おいで』



秋の甘やかす様に囁く“おいで”って言葉が好き。


胸がキュッと締め付けられる。


心地のいい締め付け。


私は勢いよく秋の膝の上に飛び乗り腕を回し抱きついた。


秋も肩を揺らしながらきつく抱きしめ返してくれる。


付き合いたての頃よりも笑顔を見せてくれるようになった。


それが凄く嬉しかった。