愛を餌に罪は育つ

見慣れたドア。


見慣れた玄関。


見慣れたフローリング。


一緒に暮らし始めていったいいつからここを自分の家の様に感じる様になったかは覚えてない。


だけど今では一番心身共に休まる場所だ。



『まだ機嫌は治らないのか?』

「不機嫌な訳じゃないよ。今反省中なの」

『ならその間に俺はシャワーを浴びてくるよ』



秋は撫でる様に私の頬に触れると、笑いながらリビングを出ていった。


冷蔵庫から取り出したペットボトルの水を飲み、その場に座り込んだ。


もっと大人になろう。



“ミーの我が儘は可愛いよ。そういうところも含めて好きだよ”



貴方も秋と一緒で私を甘やかしてばかりだった。



“美咲は一人なんかじゃないよ”



私は貴方のその言葉だけを信じた。


他の事は私にとって重要じゃなかったから。


血の繋がりのない家族。


事実を知って納得出来たこともあった。


視線の意味を理解した。


自分を取り囲む世界が気持ち悪くなった。


貴方だけが光だった。


でも夢を抱いてしまったの。


その途端光は輝きを失い始めた。