愛を餌に罪は育つ

秋の彼女っていうポジションにいたいなら秘書のポジションは別の人に譲るしかないよね――。


南雲会長の事だから本当にお見合いセッティングしちゃいそうだし。


それに南雲会長なら色んな大手企業や資産家、政治家の方々とのパイプもあるだろうし、綺麗で知的で秋とお似合いなご令嬢なんて直ぐに見付けられる。


私なんかじゃきっと太刀打ちできないよ。



「秘書――辞める」



気を抜くと重たいため息が漏れそう。



『本当にいいのか』



いいも何もそれ以外選択肢ない気がするんだけど――。



「仕事の時一緒にいられなくなるのは嫌だけど、お見合いされるのはもっと嫌っ!!」



秋は声を漏らして笑い始めた。


笑い事じゃないよ!!



「後任の秘書探すの?普通に考えて探すよね――」

『そう口を尖らせていたら折角の可愛い顔が台無しだ』

「その内秋の隣には仕事のできる綺麗な女の人が立ってるんだろうね」



想像しただけで苛々する。


プイッと顔を窓の外へ向け、私は不貞腐れた様にずっと外の景色を眺めていた。