愛を餌に罪は育つ

帰りの車の中、私たちは手を繋いでいた。


車内は温かいけど繋がった左手はもっと温かい。


未だに信じられなくなる時がある。


だけど温もりを感じるたびに自覚する。


秋の彼女なんだって――。



『そんなに楽しかったのか?』

「え?」

『ご機嫌な顔してる』



赤信号で車を止めた秋は私の顔を見て目を細め優しく微笑んだ。


繋いだ手をギュッと握り私も笑顔で返した。



「すっごく楽しかった。また連れていってねっ」

『今度はもう少し遠くへ行こうか』

「ううん、いいの近場で。運転するの大変だろうから」



車を走らせている秋の横顔。


顎のライン。


首筋。


全部愛しくて堪らない。



「ペーパードライバーの講習受けに行こうかな」

『必要ないだろ』

「必要だよ。その辺に行くならまだしも、遠くに行く時にずっと秋に運転してもらうのはやっぱり申し訳ないよ」

『危ないから駄目だ』

「えぇー」

『今日の美咲は子供みたいだな』



今日の言動を諸々思いだし、恥ずかしくなって顔を俯かせた。


私の頭を包み込むように秋の大きな手が頭にのせられた。



『美咲といる時に何かを苦だと思った事はないよ。運転も同じことだ。笑って隣にいてくれるだけで俺は満たされてる』