愛を餌に罪は育つ

『俺も初めて来た』

「――え?」



嘘でしょ!?


道に迷うことなくすらすら車を走らせてたのに!?


ナビだって使ってなかったじゃない。



『そんなに疑いの目を向けなくてもいいだろう』

「だって――信じられないんだもん」

『この場所は翔太に教えてもらって、事前に何度も地図で場所を確認したんだ』



翔太君に?


翔太君はこういうスポットに詳しそうだなと、失礼ながらちょっと納得してしまった。


秋は私の首もとに顔を埋めると、抱きしめる腕にグッと力を入れた。


今一瞬照れた様な顔しなかった?



「秋、顔見たい」

『後でいくらでも見せてあげるよ』

「今がいい!!」



今の私は秋からしてみれば駄々を捏ねる子供の様かもしれない。


どうにかしてもう一度照れた顔の秋が見たかった。



「今見せてくれなきゃ一週間口聞かないから。仕事中も全部やり取りはメールだよ」



なんて子供じみた発言だろうと、言った後に恥ずかしくなった。


でも効果はあった様で、ゆっくりと秋は顔を上げ私と目が合うと困った様に微笑んだ。



「照れてる秋って可愛い」



一人で声を堪えながら笑っていると、耳元で囁かれた。



『ベッドの中で後悔させてやる』



全身が痺れるような甘い囁きにゾクッとした。