愛を餌に罪は育つ

「申し訳ありませんが携帯電話はこちらで預からせて頂きます」

「もう私には必要のない物なので気にしないで下さい」



もう一つのビニール袋に入っている薬。


これって――。



「お二人とも既にお気付きかとは思いますが、こっちのビニールに入っているのは睡眠薬です。梓が飲んだ物と同じ種類の物です」

「それじゃあやっぱり梓が聞いた声は朝陽だったんですか?」

「恐らく」



証拠となりえる物を全て置いたまま消えてしまった朝陽。


正確な居場所は分からないけど、多分私か秋の傍にいるはず。



『宮沢さんの件は勿論ですが、森川さんの殺害未遂と大野さんのご家族殺害及び放火の第一容疑者として今行方を必死に追っとります』

『失礼ですが、潜伏しそうな場所などに目星はついているんですか』



秋の言葉に重い首を横にふる山田さん。



『指名手配書を出しますんで身動きは取りづらくなるとは思います。それに今までよりも捕まえられる確率も上がるでしょう』



後は警察に任せるしかない。


どれだけ不安で心配しようと、ここまで大事になってしまったら私たち素人にはもうどうしようも出来ない。