愛を餌に罪は育つ

案内された応接室には山田さんと笠原さんがいて、私たちは軽く頭を下げ挨拶をした。



「どうぞお掛け下さい」



この張り詰めた空気は本当に心臓に悪い。


いつもと変わらない秋は流石だと思う。



『残念ながら野坂さんの姿は何処にも見当たらんでした』

「居なかったんですか?じゃあ――何処、に?」

『それが分からんのですよ。車も置きっぱなしでしたんで移動する時は公共の乗りもんを使うはずなんで、直ぐに見付かるとは思うんですがね』



シンとしている中、笠原さんが透明のビニール袋を机上に置いた。


ピンクの携帯が入ったものと薬の錠剤が入ったものが二つ。



「この携帯電話は事件後行方が分からなくなっていた大野さんの携帯電話です」

「私、の?」

「はい。中身も確認が取れているので間違いありません」



朝陽が持ってたの!?


どうして――。


こんなの持ってたって何の価値もないじゃない。



「何の為に所持していたかは不明ですが、今調べています」



理由――。


どんな理由があろうと気持ち悪いとしか言いようがない。