愛を餌に罪は育つ

当たり障りのない日常の話も盛り上がる事はなく、ただ時間だけが過ぎていった。


普段なら煩く感じる筈の騒がしさも今は凄くありがたかった。



『そろそろ出ようか。きっと秋さんが心配してる』

「秋は心配性だからね」

『美咲ちゃんに限っての事だよ』



嬉しい筈の言葉も、今は素直に喜べない自分がいた。



「お手洗いに行ってきてもいい?」

『どうぞ』



私は鞄を持ち立ち上がった。


お手洗いは綺麗に掃除が施されていて、広々とした清潔感のある空間になっている。


ドアを閉めてるのに外にいる人たちの笑い声や喋り声が聞こえる。


ついさっきもお手洗いを利用している為、本当にこの場所に用があった訳じゃない。


最終確認をしておきたかった。


いつも通りの私かどうか。


秋は鋭い人だから正直上手く誤魔化せるか心配。


だけど今回は秋の為にも悟られる訳にはいかない。


翔太君が悪い訳じゃないけど、こんな事を知ったら悲しむだろうから。