愛を餌に罪は育つ

『美咲は何食べる?』



メニューを開き、私が見易い様にテーブルに置く朝陽。


そんな気遣いなんていらない。


本当に私の事を思ってくれているならもう付きまとわないで――順序だてて話をした方がいいと思いつつも、今にもそう口走ってしまいそうだ。



「仕事しながらお菓子を摘まんでたからお腹空いてない。私は飲み物だけでいいよ」

『美咲は本当お菓子大好きだよね』



止めて――。


私の事を知った様な事言わないで。


私の心を知り、確かな温もりで包み込んでくれるのは秋だけ。


先に私の頼んだコーヒーがテーブルの上に置かれた。


当たり前の様にミルク二つにスティックシュガーを一本置く朝陽。


だけど私はミルクもシュガーも使わずにコーヒーを飲んだ。


些細な事かもしれないけど、もう私は貴方が知っている美咲じゃないんだと示したかった。


コーヒーの苦味が口の中に広がると同時に、頭が冴えていく様だった。


私の態度に朝陽は苛ついた様な顔をしたけど私は気付かないふりをした。


沈黙が流れるなか、注文した料理が運びこまれテーブルの上に並べられた。


いらないと言ったのにご丁寧に私の前にもパスタが置かれた。


こういう事をされればされる程、心が冷たく静まり返っていく。