愛を餌に罪は育つ

会社を出ると予想通り朝陽が立って待っていた。


私を見つけ嬉しそうな笑みを見せる朝陽。


何も知らなければ、ときめいてしまいそうな程眩しい笑顔だ。



『お疲れ様。何処に行こうか?』

「とりあえずタクシーに乗ろう。行きたいお店があるから」



私は朝陽と並んで歩き始めた。


手を握られてしまわないよう肩からかけた鞄の紐を両手で握りしめて。


タクシーに乗ってからずっと朝陽は喋っていた。


私は相槌をうつだけ。


本当に相槌をうっているだけで、笑顔すら作っていない。


端から見れば酷く不機嫌な女に見えるだろう。


周りにどう思われようとどうでもいいほど今この時間は私にとってくだらない無駄な時間だった。


運転手に伝えた場所でタクシーが止まり、私たちはタクシーを下りた。



『お洒落なお店だね。どうしてこんなお店知ってるの?』



笑っているのに目は冷ややかで、どこか嫉妬している様にも見えた。



「たまたま通りかかった時に気になったお店なの」

『そっか』



嘘――以前笠原さんと来たお店。


だけどその言葉に満足そうに笑い、お店の中に入って行く朝陽の背中を見ながらなんて馬鹿な男なんだろうと、思ってしまった。