愛を餌に罪は育つ

まさか堂々と会社まで訪ねてくるとは思っていなかった。


どんな顔をすればいいのか分からない。


だけど私の事はお構い無しに、朝陽はにこやかに喋りかけてきた。



『心配したんだよ?中々会えなかったし携帯も繋がらないから。携帯壊れちゃったの?』

「――――」



あの夜の出来事がまるで初めから無かったかの様な態度に、正直驚きを隠せなかった。


あれだけ一方的に私を抱いたくせに、私に対して少しも悪いことをしたという気持ちはないんだろうか。


愛のある交わりだったとでも?


私にとってあれは強姦と呼んでもいいくらいの屈辱だったのに。



『どうしたの?もしかして忙しかった?』



朝陽に対してここまで嫌悪感を抱く日がくるとは思ってなかった。


何も言わない私に対して、朝陽は笑顔を壊さずに話し掛けてくる。



『忙しいならまた明日くるよ』



立ち上がり歩き始めた朝陽の背中に声をかけた。



「ねぇ、今日の夜空いてる?空いてるなら食事にいかない?」

『空いてるよ、楽しみにしてる』



私は朝陽の姿が見えなくなるまでその場に立ちつくしていた。


もうここには居ないと自分の目で確認しないと落ち着かないから。


明日も来てもらう必要なんてない。


今日朝陽との関係を断ち切る。