愛を餌に罪は育つ

直ぐ後ろに副社長の気配を感じる。


もう、駄目だ――誤魔化せない――――。


私生活での出来事を職場に持ち込むなんて、社会人としてあるまじき行為だと失望されてしまうかもしれない。


そう思うと昨日の出来事を思い出すよりも胸が締め付けられるようだった。



『大野さん』

「――はい」



私は視線を下げたまま振り向き、副社長と体ごと向かい合った。


副社長の顔を見るのは怖かったが、ずっと下を向いている訳にはいかないため私は顔を上げる決心をした。


突然副社長に腕を掴まれ、あまりにも急な事に驚き咄嗟に顔を上げると副社長と目が合い、もう逸らすことはできなかった。



『泣いていたのか』

「――申し訳ありません」



怒られると思いきや、副社長の声は優しくてこんな時なのに私の心臓は高鳴った。