愛を餌に罪は育つ

笠原さんはカップをソーサーの上に置くと、少しの間目を瞑っていた。


声をかけられる雰囲気じゃなくて、私は気まずさを感じテーブルに視線を落とした。


ストーカーの件はもう少しよく考えてみますって言って帰る?


自分から連絡しといてそれはないよね――。


でもこの状況はちょっと気まず過ぎるよ。



「すみません」



そう言われて私は慌てて顔を上げた。



「い、いえッッあの――大丈夫、ですか?」

「えぇ、色々考えていたら少し気分が悪くなってしまって――本当にすみませんでした」

「刑事さんの仕事って体力的にも精神的にも大変そうですし、あの、気にしないで下さい。私の方こそお疲れのところ急にご連絡してすみませんでした」



何とも言えない空気に包まれ落ち着かない気持ちになった。



「あ、あの――また今度ゆっくりお会いできますか?」

「ごめんなさい、気を遣わせてしまって。またお話を聞かせて頂けると助かります」

「助かってるのは私の方です。私はいつでも大丈夫なので笠原さんのご都合がいい時にご連絡を頂けませんか?」

「また近いうちにご連絡させて頂きます」



お勘定を済ませお店を出ると、笠原さんが駅まで送ってくれた。


女性に送ってもらうのは何だか変な感じがした。


でも笠原さんは安心感を与えてくれる女性だなと思った。


私も与えられてばかりじゃなくて、誰かに与えられる様な女性になれるといいな。