「社長、先程も言いましたが、彼女に迷惑が掛かるんですから、行動には気を付けてください」

「……わかってるよ」


倉木さんの言葉に、ますます拗ねるまーくん。


私より年上で、大人のまーくん。

なのに、お兄ちゃんに怒られている弟みたいな感じで、そんなまーくんが可愛く思えた。


「……なぁ、英治」

「社長。何度も言いますが、今は仕事中ですので呼び方を……」


倉木さんの注意を気にする事なく、まーくんは続ける。


「今日って、いつもより早く終われるよな?」


何を言っても無駄だと思ったのか、倉木さんは大きくため息を吐き、手帳を確認する。


「……はい。今日はこの後、取引先と会う予定は無いので、大丈夫かと思います」

「わかった」


まーくんはそう言うと、今度は私の方に振り返り


「紗和、今日の予定は?」

「えっ?特に無いけど……」

「よし!じゃぁ、終わったらご飯食べに行くか」

「えっ?」


急な誘いに戸惑う私。


「嫌か?」


そんな私を、まーくんは寂しそうな表情で見る。