会議室のナイショの関係

「ちょっと、花本さん借りていいかな?」


会議室に入ってきたのは、まーくんだった。


「は、はい!では、私は先に戻ります」


香澄は慌ててその場を立ち去る。


「頑張って」


耳元でそう言ってから。


“頑張って”って……

何を!?

“好き”とは認めたけど、“気持ちを伝える”なんて一言も言ってない!

むしろ、伝える気なんてないから!


だって、まーくんは社長。

いくらお兄ちゃんの友達で昔から知っているとはいえ、遠い存在。

それに、私の気持ちを伝えても迷惑なだけ。

そして、まーくんからしたら、私は友達の妹。

私が気持ちを伝えたら、まーくんは気を使うだろう。

私は、まーくんに迷惑を掛けたくないし気も使わしたくない。

そんな事を考えていると、


「あっ、出来ればこの事は内緒にしてもらえると有り難いんだけど」


会議室を出て行こうとする香澄に、まーくんは苦笑いになりながらそう言った。


「は、はい!もちろん、誰にも言いません!」

「ありがとう」


香澄の返事にまーくんはホッとしたように、にこっと笑う。

その笑顔に真っ赤になりながら、香澄は会議室を後にした。