「な、何?」

「でも、その後、紗和が他の社員にお茶を出している時、社長、紗和の事じっと見ていたの。なんか、眉間にシワを寄せて機嫌が悪そうに見えたけど……」

「えっ?まーくん、怒っていたの?」


私は香澄の言葉に動揺し、香澄の肩をガシッと掴み詰め寄る。

まーくんが私を見ていたのは知っている。

だけど、何で見られていたのかはわからなかったし、私はすぐに視線を逸らしたから、気付かなかったけど……

機嫌が悪かったって、私、まーくんを怒らすような事を何かしたっけ?


「さ、紗和?“まーくん”って?」


香澄は“誰、それ?”って表情で私を見る。


「あっ……」


まーくんの機嫌が悪かったと聞いて焦った私は、つい“社長”じゃなくて“まーくん”と無意識に呼んでしまっていたみたいだ。


「えっ?もしかして社長の事!?紗和、社長とつき……んぐっ……」


私は慌てて香澄の口を塞ぐ。


「声、大きいよ」


私が小声でそう言うと、香澄は苦しそうに私の腕を叩く。

香澄の口から手を離すと


「ハァ……ハァ……、苦しいから」

「ごめん」

「で、どうなの!?」


香澄の目はキラキラしている。

それはもう、好奇心いっぱいって感じに。