お茶出しを終えた後、私と香澄は一度、給湯室へ行く。


「やっぱり社長ってカッコイイよねー」


香澄は顔を赤らめながら言う。


「そ、そうだね」


私は、そうとしか答えられなかった。

“まーくんがお兄ちゃんの友達で、昔から知っている”という事を、香澄にも言っていないから。

香澄の事を信用していないわけじゃないんだけど、まーくんに憧れている女性社員は多い。

まーくんが社長っていうのもあり、たいていの女性社員は憧れているだけなんだけど、中には本気でまーくんの事を狙っている人もいるらしい。

だから、どこからバレるかわからないから、へたな事は言えないと思っている。


「あっ!そうそう。社長といえば、さっき紗和に笑いかけてなかった?」


香澄は興奮しながら聞く。


「えっ?お茶を出した時に“ありがとう”って言われただけだよ?」


本当にそれだけなんだけど、香澄は「へぇー」と疑いの目で私を見る。

そんな香澄に、私はドキドキしながら視線を向ける。