彼と彼女と彼の事情

「よっ!兄貴、帰ってくるの早いじゃん!」


「おぅ!……なんだ、奈緒、来てたのか?久しぶりだな」


「うん。お邪魔しています。今ね、郁人にご飯をご馳走になってたの。すごく美味しいよ!」


「……そっか」


明るく隼人に答えたつもりだった。


でも……


そのときの空気は、さっきまでの温かくて明るさに満ちたものではなくて
 

どことなく冷たくて、部屋に緊張が走ったような、張り詰めた空気だった。