彼と彼女と彼の事情

料理の得意な郁人が、その日の夕飯に、茄子とベーコンのトマトソースパスタ、オニオングラタンスープをご馳走してくれた。  


味は、というと……   

軽く、素人の域を越していた。 


「すっごく美味しい!!」と、大絶賛する私の隣で


「だろう?その辺の店には、ちょっと負けない自信があるぜ!」と、得意気になって笑う郁人がいた。


内心……郁人には適わない!と思った。


冗談でも、『今度は奈緒が作ってくれよ』なんて言われたらかなり顔が引きつる。 


それくらい、郁人の腕前は確かだった。