彼と彼女と彼の事情



そして、私の脳裏にはあの日の光景がありありと浮かんだ。



『こっちへおいで』
と、差し出されたあの掌。


大きくて温かくて、私をすっぽり包み込んでくれた掌の主は、郁人だった――。


夢の中で感じた心地よさ。

楽しくてはしゃぎ回った草原の思い出。


その懐かしさを感じる郁人の掌。


記憶の片隅に置かれたその感触を忘れてはいなかった。