彼と彼女と彼の事情

再び訪れた重苦しい雰囲気を打ち破ったのは、隼人だった。 


「そうだよな。俺もどうかしてたよ。馬鹿だな、俺。
でも、奈緒の気持ち聞けてよかったよ。奈緒は、俺の頼みだったら断らないっていう変な自信があったから。ちょっと凹んだけど、当然だよな。また優しくされたら勘違い起こしてたとこだよ。カッコ悪りいな、俺」


アハハハ…と自嘲気味に笑う隼人の目が、どことなく寂しそうだった。



何も話さない私とは対照的に、急に饒舌になった隼人。 


そして、「今日はここに来れてよかったよ!お互い幸せになろうな」と、右手を差し出された。