彼と彼女と彼の事情

途端、この前、ホテルで見かけた彼女の姿が頭に浮かんだ。 


確かに、お嬢様らしい雰囲気ではあったけれど、彼女は本気で隼人のことを好きになって結婚を決意したのだろうか……。


やっぱり親の言いなりで仕方なく、なんだろうか……。


どうせなら、隼人のことを心から好きであってほしい――と願うばかり。 



「奈緒、どうかした?」


「ううん、別に……。隼人は今、幸せなんだよね?」


隼人の気持ちを確認するかのように尋ねた。