彼と彼女と彼の事情

カタンと音を立て、グラスがテーブルに置かれた。



その音のする方向に目を移すと、隼人がこちらを見据えていた。



「結婚式の日取りが決まったよ」


―――…!!!


淡々と話す隼人の言葉に、危うく手にしていた携帯を落としそうになった。


無言で、隼人の顔を見つめた。


「6月にニューオータニですることになったよ」


――やっぱり。あのときの……。 


「そうなんだ。もうすぐだね」


顔色を変えず、話したつもりだ。


隼人に、動揺したところなんて見せられない。


「あぁ。あいつから何か聞いてるか?」


「ううん。郁人からは何も聞いてないよ」


努めて冷静を装い、静かに答えた。