彼と彼女と彼の事情

「奈緒も、グラス持ってこいよ」


「ううん、私はいいよ」と、首を振った。


そのまま、テーブルに向かい合わせになるような形で座り込んだ。


掌には、携帯が握り締められたままだった。


テーブルの下では、携帯を開けたり閉めたり、何度も同じ動作を繰り返した。


やはり……


郁人のことが気になった。

心配しているだろうし、隼人の意味深な言葉が拍車をかけた。