彼と彼女と彼の事情

――と、再び携帯が震えだした。


「出ろよ、携帯!」


「ううん」


と、首を横に振り、机上の携帯に目をやった。 


静かな部屋に、携帯のバイブレータの音だけが響き渡る。


二人とも、視線の先には、ピンクの携帯があった。


無情にも、〈郁人〉という存在を報せる道具が、二人の前に姿を現した。



「あいつは、おまえのこと本気だよ」


と、隼人がポツリと言った。


「……えっ?」


「4年前から奈緒のこと、好きだったからな」


「………」


遠い目をした隼人が、淡々と話し始めた。