彼と彼女と彼の事情

しばらく、二人とも黙りこくったままだった。


静まり返った部屋の中では、カチコチ…カチコチ…とリズムよく時間を刻む音だけがしていた。



ついさっきまでは、そんな時計の音すら気にならなかったのに……


今は、無性に気になる。


相変わらず、雨は止みそうもない。


降りしきる雨が容赦なく窓ガラスを打ち付け、存在感を誇示していた。


――と、


ブーブー…ブーブー…と、テーブルの上で、七色の明かりを放ちながら携帯が震え出した。


「鳴ってるぞ!」


気付いてはいたものの、この状況、この場所では出る気にはなれなかった。


というより、出れなかった。