彼と彼女と彼の事情

心臓がバクバクと音を立て、グッと胸を鷲掴みされたような痛みが走った。 



「奈緒……?」


再び、訝しげな表情で見つめる隼人。 


「なんでもないよ。ただ、ちょっと携帯が気になっただけだから」


「奈緒……。そんなに大事な用件なら、今すぐ連絡しろよ」


「ううん。いいわ、やめとく」


隼人にそう答えるなり、軽く目を閉じた。


再び、目を開けると、ふぅ〜っと深く息を吐いて、気持ちを落ち着かせた。



そして、全てのメールを確認したあとは、パカッと携帯を閉じた。