彼と彼女と彼の事情

「俺のCDとメガネ、それから……」


「………」


何と言っていいのか分からず、押し黙った私の表情を察したのだろう。


「冗談だよ!奈緒に会いに来た」


「……えっ?」


何かの聞き間違え?今、なんて言ったの?


雨がさっきより強くなり、けたたましい音を轟かせる。


地面を打ち付ける雨粒が跳ね返り、勢いを増す。



声が……隼人の声が、はっきり聞き取れない。 



「さっき病院に行ってきたんだ。あいつから、だいたいの話は聞いたよ」


「あっ……」


「奈緒のことが心配になって、気付いたらここに来てた。やっぱり、車の方が早かったよ!」



ねぇ、どうして……?


どうしてなの、隼人……?